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尾形乾山。

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尾形乾山展を見に行きました。
ポスターのキャッチコピーは「乾山、見参」。
けんざん、けんざんって、ダジャレになってます!笑

今年の春、お兄さんの尾形光琳「琳派」展が、
わたしの周りでとても話題になりました。
すごく可愛かったよーと聞いて、見逃したなあと思い、
本で眺めて気を済ませていたのですが、
今回その弟、乾山先生が颯爽と登場しました。
分野は陶芸のはずなのですが「着想のマエストロ」という謳い文句。
気になりました。
作陶の世界で発想の転換、一体何をした人なのでしょう?!

展示は、その問いに答えるかのようにわかりやすく章だてされていました。

1つめの着想劇は、「器を絵画にする」こと。

「十二ヶ月和歌花鳥図角皿」という作品は、20センチ四方位の、
淵の立ち上がった角皿に、
お花さんと鳥さんのかわいらしい絵柄が絵付されています。

1月、2月、、、、と12月まであり、季節の植物と鳥が描かれていて萌え〜。
旧暦の七十二候が、生きてそこにあるような季節の移り変わりが、
ずらりと並ぶ様は圧巻で、
家族全員の誕生月の絵葉書を買おう、とじっくりみてみると、
わたしは8月生まれ「萩・初雁」で、父の9月は「すすき・すずめ」。
すずめ、かわいい。ぷっくりして茶色くって、かーわいい・・・萌え〜。

お兄さんの琳派の流れを受け継いだ花鳥バージョンもあり、
サザエさんの漫画(アニメではなくコミックのほう)ちっくな鳥さんが
とぼけた顔をしていて、ああこれが琳派なのね・・と思いました。
ユーモアにあふれるだけでなく、うつくしいのです。
絵付と焼きの絶妙なバランスなのでしょうか。さすが、巨匠ブラザーズだと、
話題になるものはこういうことなのだと思いました。

ところで、乾山は芸術家ですが、ちゃんとビジネスもしていたのだそうです。

写し、と呼ばれるいわゆるコピー製作がそのひとつ。
「この器などは、どこどこで流行した文様をいかにも日本人が好きなようにアレンジし、
京都から発注をうけて制作したものです、写しは乾山窯の大切な財源になっていたのです」
と音声ガイドでおじさんの声が言っていました。

中でもオランダ陶器の写しは印象的。
そのパステルカラーの花柄文様が、日本の土になじむような柄に調和され、
ヨーロッパの陶器の魅力はそのままに、うまい具合に和がとけこんでいます。
わたしは日本人だから、オリジナルより乾山作のほうがホッとして素敵に見えました。

感動したもうひとつの「着想」は、自然界の立体表現。

乾山作のもみじといったらこれ、というくらい有名な、
深い鉢のような器が登場します。
器の底が川底に、器のてっぺんが水面にみたてられており、
横から見ると、激しい流れにもまれて上下に見え隠れするもみじが
臨場感あふれる様子で表現されています。

さらに、器を上から覗き込むと器の底に2枚、3枚のもみじが。
激流の下に広がる、川底の世界。
沈んだまま動かない、色鮮やかな落ち葉が沈黙し、静けさをたたえています。
自然界の1シーンが、あるがままに表現されていました。

乾山のもみじは、もう一作、
お懐石に使われる手のひらサイズの平皿セットがあります。

お皿そのものが紅葉の形をしていて、
その輪郭の中に、水のうねりと、もみじがびっしりと描かれているものです。
同じ技法で、菊もあります。
こちらもまた、菊の葉の輪郭の中に菊の花が幾重にも異なる向きで描かれています。
ほら、花束を写真に撮るとき、真上から接写することがありますよね。
画面全部がお花だけになるような、あのアングルによく似ていて、
「iPhoneで撮るときみたい」と咄嗟に思い、そんなのと一緒にしてしまった
自分がはずかしくなりました。
でも確かに、iPhoneの接写は被写体が生き生きとして見えるし、
乾山作品も、描かれた花鳥が今にも動きだしそうに見えるのが特徴かもしれません。

順路を進むと、さらに壮大な着想に出会いました。
「蓋ものの宇宙」。

大きめで浅い角丸の蓋つきの器です。
蓋には松が、ハードにどっしりと描かれているのですが、
蓋を開けると一転、柔らかに広がる、波、波、波・・。
波は、焼きものの地の色、つまり余白で、そこに緑と茶の、
ほんの少しの筆が入れられているだけで表されています。
風景の中に波と松があっても、そのふたつは違う空気をまとっていますよね。
乾山の蓋ものはそこを見事に切り取っています。
蓋と本体、それぞれ別の空間を描くことで、私たちが無意識に感じている、
3次元の感覚を再現しているのです。
蓋ものの宇宙とはこういうことね!と、深く納得しました。

ここちよい疲れを感じながら順路を終えると、残念なことに、
お土産ショップで絵葉書になっている作品はとても少ないのでした。
花鳥シリーズは一枚もありません。
でも美術館って大体そんなもの、集中してみておいたからいいの!
心のそこから夢中になった、まさに五臓六腑に染み渡るような時間でした。

開催は7月20日、海の日までです。ご興味のある方はぜひ!
サントリー美術館HP

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ちなみに、サントリー美術館は六本木ミッドタウンにあります。
写真はガレリアという空間で、以前、ここで吉岡徳仁さんというデザイナーの
インスタレーションが開催され、大好きだったので見に行って以来、
kusakanmuriさんでの恵比寿クラスの日などに、時間があれば足を伸ばしています。
気の流れがここちよくて、おすすめです!
by iiyo-ok | 2015-06-18 12:58 | みほこライフ